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教員インタビュー|100年のあゆみ ~わたしと東北大学 Vol.01

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川添 良幸名誉教授(未来科学技術共同研究センター)

東北大学が掲げる3つの理念「研究第一」「門戸開放」「実学尊重」。 その中でも、「門戸開放」の理念の下、東北大学は115周年の歴史の最初期から積極的に留学生を受け入れてきました。

川添良幸名誉教授は、金属材料研究所において、特に多くの留学生を受け入れ、育て、優秀な人材として世界に羽ばたかせてきました。「門戸開放」を誰よりも実践してきた川添名誉教授に、教え子たちの証言を基に、留学生を受け入れること、大学が国際化することの重要性を聞きました。

将来の研究発展のために、多くの国々と良い関係を築きたい

ー川添先生の研究室では、様々な国からの留学生を受け入れてきたと伺っています。

私が43歳で金属材料研究所の教授に昇進した1990年は、外国人に囲まれた職場や研究環境はまだ珍しく、また、留学生が東北大学に来ること自体が「特別」なことでした。その中で、私の研究室は非常に国際的でした。

当時、私の研究室のメンバー構成は、ほぼ常に日本人と留学生が半々で、研究室のスタッフや客員研究員がほぼ全て外国人ということもありました。これは、私が国内外から優秀な人材を選び、将来の研究発展のために多くの国々と良い関係を築きたい、世界中の人とつながりたいというモチベーションを持っていたからです。中国、ロシア、インド、イラン、韓国、アメリカ、タイ、チュニジア、インドネシア、オーストラリアなどから来た学生や研究者が一緒に研究し、密に協力し合っていました。

ー川添研究室で学んだインド理科大学院アビシェク・シン教授(2004年修了)は、「川添研究室では、まるで世界への窓のように、すべての大陸から来た多くの外国人に会い、交流することができた」と言います。多様なバックグラウンドの留学生たちと接する際にどのようなことを心掛けていたのでしょうか。

とにかく、私たちは留学生を日本人学生とは違う存在として差別することはありません。

川添研では皆が理解出来る英語を公用語としていました。中国人やイラン人が多い時には、研究室では彼らの母国語でコミュニケーションできるようにしました。私は彼らの母国語で話すことはできませんでしたが、彼らは生活している環境から自動的に日本語を学び、理解することができるので、コミュニケーションに困ることはありませんでした。研究やデータに関して相談したいことがあれば、日本人の学生や准教授が解決してくれたり、同じ国籍の先輩が母国語で教えてくれたりしました。私は全員に彼らの母国語で、ありがとう、おはよう、さよならを言いました。その時の彼らの笑顔は格別で、次の日も楽しく研究室に来るモチベーションになったと思っています。

「世界への窓」のように外国人と交流できる研究室

ーそのような川添研究室の雰囲気もあり、教え子の皆さん同士が今もつながりを持っていると伺いました。マンチェスター大学のモハマド・サイード・バーラミー博士(2009年修了)は、「川添先生は、科学的生産性の観点から、インタラクティブな環境を作ろうとしていた。自分自身のコミュニケーション能力の向上につながった」と話しています。

私の研究室を卒業した学生たちは、既に母国等の有名大学で立派な教授等になっています。彼らの教え子、すなわち私の孫弟子も、一緒に研究プロジェクトに取り組み、今も皆で充実した時間を過ごしています。つまり、大学の国際化は、知識の共有において私たちを豊かにし、教育や研究の面で大きな家族を作ることができるのです。

とにかく、良い国際環境を作るために、私は自分の人生の原則である「他人を差別しない」ということを基本に行動しています。

私はすべての学生を友人として見ています。誰もが私の良き友人なのです。
そして、私は常に自分をみんなの友達として位置づけ、彼らを喜ばせたいと考えています。このような環境であれば、私の研究室にいる誰もが簡単にその雰囲気を楽しむことができ、また、誰もが良い友人であるため、気まずい思いをすることはありません。

「すべての学生は、良き友人」

ー北京大学の王前教授は、仙台で自動車教習所に申し込むための書類の書き方を、川添先生が一文一文丁寧に説明してくれたことが今でも忘れられないとおっしゃっています。川添先生の分け隔てなく留学生を受け入れる姿勢に、皆さん感銘を受けているようです。

こういう雰囲気の研究室は、異文化間のネットワークやコミュニケーションを発展させることにも役立っています。

現在では、教え子たちが、東北大学で培ったネットワークや人脈をもとに、より広く研究・教育の国内外共同研究を行う姿が見られます。このような良い例題を見ると、大学の国際化は、学生の育成や人脈形成に大きな影響を与えるものと確信できます。

東北大学をより良くするために、私たちがすべきことは、よりオープンマインドであること、そして、より多くのコラボレーションを行うために、より広いネットワークを持つことだと思います。私たちは単に「門戸開放」するだけでなく、海外の方が喜んで協力してもらえるように、彼らをよく理解しなければなりません。

また、留学生が東北大学で勉強することを喜んでもらえるために、私たちの心も開くべきです。それが、東北大学にインパクトを与えるような成果をもたらすと確信します。


川添 良幸(Yoshiyuki Kawazoe)

略歴

1947年宮城県仙台市生まれ。
1966年3月東北学院中高等学校卒。
1970年3月東北大学理学部物理第二学科卒業、1975年3月東北大学大学院理学研究科博士課程原子核理学専攻修了、理学博士。
1975年4月東北大学教養部助手、1981年11月同情報処理教育センター助教授、1989年度から3年間、文部省視学委員、1990年5月東北大学金属材料研究所教授、同計算材料学センター長としてスーパーコンピューターの導入から運用に当たる。
2005年4月東北大学情報シナジーセンター長(現サイバーサイエンスセンター)、この間、東北大学情報シナジー機構副機構長及び教員としては当時初めての事務職員兼務として同本部事務機構情報部長を併任。2012年3月定年退職。
現在、東北大学名誉教授として同大未来科学技術共同研究センター内で研究を継続中。
ACCMS(Asian Consortium on Computtioal Materials Science)創始者・代表、2017年からインド国SRM Institute of Science and Technology A. P. J. Abdul Kalam distingushiched Professor、同ACCMS Global Reseach Centre, Director、2019年からタイ国スラナリ工科大学Distinguished Professor、NPO法人科学協力学際センター代表理事、日本半導体デバイス産業協会理事、2019年から名誉教授ドットコム株式会社代表。日本遺伝子研究所顧問など多数の企業を支援。
上記現職の他、NPO法人日本語教育e-learningセンター副理事長、ロシア国メガグラントリーダーなどを歴任。東方学術賞(Eastern Prize)、科学技術情報センター学術賞、The Ken Francis Award、日本金属学会学術功労賞、IBM Shared University Research Award、日本金属学会学術貢献賞、ACCMS賞等を受賞。

川添 良幸(Yoshiyuki Kawazoe)

略歴

1947年宮城県仙台市生まれ。
1966年3月東北学院中高等学校卒。
1970年3月東北大学理学部物理第二学科卒業、1975年3月東北大学大学院理学研究科博士課程原子核理学専攻修了、理学博士。
1975年4月東北大学教養部助手、1981年11月同情報処理教育センター助教授、1989年度から3年間、文部省視学委員、1990年5月東北大学金属材料研究所教授、同計算材料学センター長としてスーパーコンピューターの導入から運用に当たる。
2005年4月東北大学情報シナジーセンター長(現サイバーサイエンスセンター)、この間、東北大学情報シナジー機構副機構長及び教員としては当時初めての事務職員兼務として同本部事務機構情報部長を併任。2012年3月定年退職。
現在、東北大学名誉教授として同大未来科学技術共同研究センター内で研究を継続中。
ACCMS(Asian Consortium on Computtioal Materials Science)創始者・代表、2017年からインド国SRM Institute of Science and Technology A. P. J. Abdul Kalam distingushiched Professor、同ACCMS Global Reseach Centre, Director、2019年からタイ国スラナリ工科大学Distinguished Professor、NPO法人科学協力学際センター代表理事、日本半導体デバイス産業協会理事、2019年から名誉教授ドットコム株式会社代表。日本遺伝子研究所顧問など多数の企業を支援。
上記現職の他、NPO法人日本語教育e-learningセンター副理事長、ロシア国メガグラントリーダーなどを歴任。東方学術賞(Eastern Prize)、科学技術情報センター学術賞、The Ken Francis Award、日本金属学会学術功労賞、IBM Shared University Research Award、日本金属学会学術貢献賞、ACCMS賞等を受賞。